名古屋伏見発・歌舞伎襲名グッズ横流し問題!!　

江戸は日本橋。東海道五十三次の起点である。一日中旅人や商人など人通りの絶えない、日本の台所である。
そんな橋のたものとに、大きな風呂敷を担いだ丁稚が疲れた様子で、佇んでいた。
そこへ遊び人の金さんが通りかかった。


●金さん
おや、伏見屋の丁稚・長松ではないか?
お主、こんなところで何やってんだ?

○長松
あっ金さん!
ちょうどいいやぁ、この反物安くするから買ってくれないか?

●金さん
伏見屋とあろう大店が、丁稚に反物売らせているのか?
どれどれ見せてみろ

おっこれは、見たところ2両はする価値があるが、いくらでぇ売るんだい?

○長松
1両でいいよ

●金さん
1両!?店売りでは値引きを一切しない伏見屋が、
どうゆう訳だい?

○長松
実は、大番頭さんが・・・・

●金さん
大番頭がどうしたんだい?悩みがあったら、話聞かせてくれねぇか?

○長松
ちょうど半年前、大番頭さんが売れると思って反物をたくさん仕入れたんだぁ。
ところが、隣町の境屋が斐川屋と組んだから、こっちが売れなくなって・・・・

●金さん
そうだな、斐川屋の作ったものは、若い娘から年寄りまで人気があるからなぁ
この反物にどんな訳があるんだい?

○長松
それは・・・・
金さん、誰にも言わないって約束してくれる?
この前、ご主人様が居ない時に・・・・

●金さん
おめぇんところご主人って、いつも居ねぇじゃないか。
この前瓦版に、１年のうちほとんど童夢ってところで遊んでいるって出てたぜぇ

○長松
そのことは、株仲間の寄り合いで問題になったと、大番頭さんが困った様子で話してましたよ。

●金さん
伏見屋は、皆働き者って聴いてるぜぇ、困った主だなぁ

おっ、そういゃあ話の続きだぁ

○長松
ご主人様がいない時に、大番頭さんが店のみんなを集めて、
この2両する反物を２０本知り合いに売ってきてくれと言ったんだ。
おいら田舎から出てきて、知り合いがいないから売れないよと言ったら・・・・・・

●金さん
それで大番頭は何て言ったんだい?

○長松
店には1両だけ入れて、後はこずかいにしていいんだって。

手代の兄さんたちは、喜んでいたけど、よく考えてみると、
お店の売り上げをネコハバしている気がして・・・・・
国にいるかあちゃんからは、どんな事があっても、悪い事に手
を貸すなって言われているから・・・・
でも反物はお店に返しちゃいけないぞ、と言われたんだ。

●金さん
長松、おめぇさんは偉いなぁ。これはれっきとした、横領だぜぇ。

○長松
横領?

●金さん
詳しく言えば、業務上横領ってやつだよ。下手したら大番頭お縄につく事になるぜぇ。
老中の水野様や株仲間の監査役の東増屋が知ったら、店はおとり潰しになるぞ

○長松
えっ、そんなに罪が重いなんて、きっと大番頭さん知らないよ

●金さん
大番頭とあろうものが、知らないってことは、通用しないよ。

○長松
おいら、一本も売らなくてよかった。金さんありがとう。

ところで金さん、何者なの?

●金さん
俺は、通りすがりの遊び人さぁ